漫画「ヒストリエ」が面白い理由は表現にあり。感想と伏線を解説【ネタバレ】

漫画「ヒストリエ」が面白い理由は表現にあり。感想と伏線を解説【ネタバレ】

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マンガ「ヒストリエ」について解説します。

この漫画は「表現のスゴさ」が分かると本当に面白いので、絶対読むべきです。

アルパカ

ヒストリエは巻が進むほど面白くなるので、この時点ではまだまだ地味な面白さですね

目次

【ヒストリエ1巻】面白い理由を解説・考察(ネタバレあり)

ヒストリエ1巻の面白いポイントまとめです。

ヒストリエ1巻の冒頭へ繋がるのは4巻の回想終わりから

1巻の冒頭へ繋がるのは、4巻の回想終わりからです。

この1巻~4巻が岩明先生オリジナルなフィクションです。

いきなり物語の舞台が現在→過去へと飛ぶのは珍しい構成です。

 

ちなみに、荒野で拾った青銅のヘビは、キリスト教的なモチーフもありそう。

» 参考:青銅の蛇(Wiki)

 

史実(原作)を知っているか、マンガをこの後読み進めていれば、「アレキサンダー大王」の額のヘビのことかな、と思うはず。

※この時点では、エウメネスはアレキサンダーの「ヘビの痣」を知りません

 

奴隷と差別と表情

「奴隷」という現代の我々からすると「明らかにダメ」なものも容認されていたのがこの時代です。

エウメネスは主人公であり、正しさの代弁者でもあります。

現代の感覚で「差別では?」と言っているシーンが印象的でした。

引用元:ヒストリエ1巻

引用元:ヒストリエ1巻

1話目から面白いなーと思ったのが、この奴隷の沈黙の表情です。

この奴隷(ビクタス)、この後逃げますw

「不満を抱いていたけれど、言葉には出さなかった(出せなかった)」というのも1コマで描いていたということが、脱走によって分かります。

 

謎の主人公エウメネスとカルディア

謎の主人公エウメネスと、カルディアの描写が1巻ではされました。

1話目からして、アリストテレスすら感心させる知恵を見せたエウメネス。

彼の天才っぷりがさりげなく描かれています。

アルパカ

「君は天才だ」みたいに言わないところがマンガ的に良いですよね

 

そして、カルディアに戻ってきたエウメネスは何者なのか、ここで何があったのか?

というところから回想に入ります。

まさかワンピースも驚きの4巻以上続けての回想になるとは思いませんでしたw

 

ちなみにこのマンガは史実を元にしています。

なので、それを知らないと、ここで語られる「王宮」という言葉は唐突に思えます(気にしなくても良いですけどね)

引用元:ヒストリエ1巻

引用元:ヒストリエ1巻

 

エウメネスの賢さがとにかく際立つ1巻

エウメネスの賢さがとにかく際立つ1巻でした。

城に入るために、敵味方の状況を把握し、適切な一手を打つ。

確かにこのやり方なら、開門するかもなあ、という妙な説得力がありました、スゲー。

 

あと、地味に勇気がある。

自分の考えが合っているだろう自身の強さもあるでしょうが、兵士たちの中を堂々と歩くのはなかなかできないですよね。

アルパカ

地味だけどスゴい「エウメネス」にじわじわ魅了されていきます

 

エウメネスが地球と名付ける

まず1巻では、哲学者アリストテレスと主人公エウメネスとの邂逅が描かれます。

ここでエウメネスはこの世界を「地球」と名付けます(表紙も地球を持っているエウメネスでしたね)

ヒストリエ地球

引用元:ヒストリエ1巻

 

アンティゴノスがエウメネスという名前に反応する

アンティゴノスは、エウメネスという名前に反応しています(こういうのが細かくて楽しい)

エウメネスの名前

引用元:ヒストリエ1巻

このときは、エウメネスという名前が特別なものかなと思っていたのですが、読み進めていくと分かりますねw

 

アンティゴノスという名前はここで初登場

アンティゴノスという「名前」はまた後半の巻で出てくるのですが、ここが最初でした。

引用元:ヒストリエ1巻

引用元:ヒストリエ1巻

ヒストリエ9巻付近まで読むと、「あ、この名前…」となるはず。

ってことで、最新刊まで読んでから1巻を読み直すとそれはそれで発見があります。

 

【ヒストリエ2巻】面白い理由を解説・考察(ネタバレあり)

ヒストリエ2巻のネタバレ感想(面白いところまとめ)です。

トラクスの解放と直後の惨殺

トラクスの解放と直後の惨殺シーンが衝撃的でした。

流石青年漫画ということで、バンバン過激なシーンを入れてきます(1巻もそうでしたね)。

 

奴隷のトラクスがテオゲイトンに手足を開放された時の「解放感」は非常に良い描写でした。

彼は今まで「情けない姿」をたくさん出していましたし、解放時も泣いています。

そこからの、全員虐殺です。

アルパカ

なんだこの急転直下!!

1巻でエウメネスが「トラクスが私の人生を変えた」というモノローグもありましたし、何かあるなあと、ゾクゾクしながら読んでいました。

 

スキタイ人と判明。揺れるエウメネスの記憶

父親(ヒエロニュモス)を殺されて、ヘタカイオスがエウメネスを「スキタイ人だった」とバラします。

そこからのエウメネスの感情と現実を受け入れるまでの描写が秀逸です。

引用元:ヒストリエ2巻

引用元:ヒストリエ2巻

 

モノローグとしては以下のような流れ↓

気がつくと自分の両膝が激しく震えだしていた

眼の前が揺れる

揺れる顔

揺れる大地

揺れる記憶…

 

揺れる「体」から徐々に

→「周囲の世界が信じられない(揺れる顔)」

→「自分を支える世界そのものが信じられない(大地が揺れるほどの衝撃的な事実)」

→「自分が認識した記憶の嘘にたどり着く」

という流れです。

映画など動画で似たような描写はあると思いますが、漫画でうまく描けるのはスゴいです。

 

エウメネスさんかっけー!

で、そんなエウメネスですが、自身がスキタイ人であるという衝撃的な事実を受け入れます。

普通なら冷静になれないはずなのに、嘘をついていたヘタカイオスに「論理」で戦いを挑みます。

ぼくがスキタイ人である事と

スキタイ人奴隷トラクスがどの時点で死体になっていたか解明する事とは

別の問題だろ?

アルパカ

エウメネスさんかっけー!

 

エウメネスはオデュッセウスに憧れる

エウメネスはオデュッセウスに憧れています。

 

英雄たちの物語を読んだ中でもひときわ興味を惹かれたようです。

その理由は「知略」を武器にしたこと。

トロイア戦争のトロイの木馬を考案したのは彼でした。

※1巻でエウメネスがトロイア遺跡の近くにいたのは、なにか運命的なものを感じますね

 

ヒストリエ2巻で一貫してテーマとなっているのは「涙」

ヒストリエ2巻で一貫してテーマとなっているのは「涙」です。

この点に注目して読むと面白いです。

  • エウメネスは実の母親が殺されても泣かない
  • ヒエロニュモス家に行って新たな母親の前で泣く
  • 父親(ヒエロニュモス)の死を見て泣く
  • スキタイ人である事実を受け入れた瞬間は泣かない
  • 寝床も毛布もないカロンの部屋で泣く
  • 書籍を持ってきて貰って泣く

 

つまり、彼は人生を賭して戦う場面では泣かなかったのです。

それ以外の瞬間、悲しい時や人の優しさに触れた場面では泣いています。

涙の描写でスゲーと思ったのは、書物を持ってきてもらった時のシーンです。

引用元:ヒストリエ2巻

引用元:ヒストリエ2巻

アルパカ

このシーン、カットの切り取り方に惚れ惚れします…。

 

実は1巻でエウメネスは母親の死にたいして泣いていた

エウメネスは「母親の死に対して、泣けなかったこと」を謝らないといけないと思っています(ヒストリエ210P)。

しかし、実は1巻でエウメネスは母親の死に対して泣いています。

夢の中で母親と対峙した時のシーンです。

引用元:ヒストリエ2巻

引用元:ヒストリエ2巻

こんな感じで読み返すと色々な発見があるのがヒストリエです。

本当に面白い漫画です、はい。

 

【ヒストリエ3巻・4巻】面白い理由を解説・考察(ネタバレあり)

ヒストリエ3巻,4巻のネタバレ感想(面白いところまとめ)です。

「おまえの最期も不自然なものでなきゃいいよな」という呪いの言葉

奴隷として売られることになったエウメネス。

父親の敵であるヘカタイオスに対して「おまえの最期も不自然なものでなきゃいいよな」という呪いの言葉を投げかけます。

引用元:ヒストリエ3巻

引用元:ヒストリエ3巻

結局、エウメネスは5巻でヘカタイオスと再会するのですが、この辺りの人間関係の変化が面白いです。

アルパカ

にしてもこの「人を呪わば穴二つ」的な展開はなんとも怖いですね

 

「よくもだましたアアアア」の元ネタはヒストリエ3巻のエウメネスのセリフ

「よくもだましたアアアア」の元ネタはヒストリエ3巻のエウメネスのセリフです。

育った故郷を出る際に、「スキタイ人であることを隠して、育ててきた家族や周囲の人々」に対して投げかけた呪詛の言葉です。

「よくもよくもぼくをォ!!」

「だましてくれたなアアアア」と何度も叫びます。

この時の感情の変化が見所でして、激しい怒りと、追って湧いてくる悲しみが表現されます。

引用元:ヒストリエ3巻

引用元:ヒストリエ3巻

 

ヒストリエの母親の描写が秀逸

ヒストリエの母親の描写が秀逸でした。

育ててきたエウメネス(息子)の呪詛の言葉を聞きたくない、というシーンです。

5巻で、エウメネスへの愛情が語られるわけですが、事件の後は「どういう風にエウメネスに向き合えば良いのかわからない」状況だったんでしょうね。

引用元:ヒストリエ3巻

引用元:ヒストリエ3巻

 

冷静な観察者であるエウメネス

元々、冷静な人間だったエウメネスですが、この辺りからその特徴が際立ちます。

より冷静に、傍観者の立場を取るような気がします。

※例えば、自分を買ったゼラルコスが殺害される姿を感情無く見るシーンなど

 

文化が違う【NHK番組を見ているよう&ブラタモリ感】

「文化が違~う」というのがヒストリエで度々出てくるセリフです。

まるで、NHKの教育番組を見ているようです。

ブラタモリ感あるw

こういった「文化」が挟み込まれる漫画は本当に面白いですね。

 

パフラゴニアのサテュラと「大人のあれこれ」

「パフラゴニアのサテュラのことを忘れることはできぬ」とエウメネスは語ります。

許嫁を失ったサテュラは、相思相愛だったエウメネスと結ばれることになります。

夜にエウメネスの家に行くということで「大人のあれこれ」があったことは確実と分かるシーンもありました

アルパカ

エウメネスは村の若者との会話から、その辺りの知識を手に入れたのかなw

 

エウメネスのことを初めて「オデュッセウス」と呼んだのはサテュラでした。

そして、2巻の「オデュッセウス」のモノローグが4巻でも流れます。

この漫画の表現は最高でしたね。

 

アルパカ

序盤のパフラゴニア編がこれにて終結です

 

カロンの罪

カロンの罪が描かれました。

エウメネスの母親が殺されたのは、カロンが「エウメネスを人質に取ったから」でした。

このカロンの罪はいつか裁かれるのか、というのは覚えておくと良いですね。

 

エウメネスの逃げ傷【4巻】

エウメネスが「逃げ傷」(背中に傷)を負ったのがヒストリエ4巻でした。

※村を救うために、襲われたことをカモフラージュするものでした

 

この傷は普通に考えると、恥となるものです。

きっと、物語の後半で意味を持ってくると思います(エウメネスの評判を下げるものになりうる)

 

バルシネ再登場。謎の男の「お待ちしています!何年でも!」

1巻で出てきたバルシネが再登場します。

アリストテレスを探しているときに、謎の男の家に招かれます。

「お待ちしています!何年でも!何十年でも…!」

引用元:ヒストリエ4巻

引用元:ヒストリエ4巻

この男、謎です。

今後物語に絡むことがあるのか?

エウメネスたちはこの辺りに戻ってくるのか?

アルパカ

先のことは分かりませんが、頭に入れておくとよいかと思います

 

ヒストリエ最新刊が久々にでました↓

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